コンピューター技術と測定ソリューションの歴史に不変のものがあるとすれば、それは、より速く、より小さく、ポータブルで正確な測定器への着実な進歩です。例えば、1980年代のメインフレームは、まだ部屋ほどの大きさで、エネルギーを消費する巨大なものであり、処理能力とデータ記憶能力は、今日の最も飾り気のない携帯電話よりもはるかに劣っていました。
同様に製造業でも、生産現場のさまざまな要件に対応するため、より小型で持ち運び可能なハンディタイプの測定器へのシフトが進んでおり、迅速なプロセスによってスループットが向上しています。この記事では、ハンディ3Dスキャナーと、その新技術がスマートマニュファクチャリングに与える影響について説明します。
ポータブル3Dスキャナーの出現
デジタル技術の進歩に伴い、従来の三次元測定機(CMM)の他に、スキャンや接触測定に対応するポータブルなFARO® Quantum X や Gage Max arms.測定アームのようなツールが出現することになりました。それらは代替品としてではなく、あらゆる製造業がそれぞれの業務を適切にこなすためのツールボックスへの追加ツールとして活用されています。
今日、この進歩の最前線はハンディスキャナーです。
その理由は、据置型三次元測定機やポータブル3次元測定器のようなすでに高性能のハードウェアやソフトウェアと組み合わせることで、最新のハンディスキャナーは、プロセスの効率化、ボトルネックの解消、時間とコストの削減、そして何よりも、明日のスマートファクトリーをより良く実現することができるからです。
ハンディ3Dスキャニングとは?
ハンディスキャニングとはその名の通り、部品の表面、アセンブリ、サブアセンブリ、治具などをスキャンして、その物理的寸法を測定するプロセスです。この作業は、部品を正しく組付け、製品の完成を保証する、 品質保証と品質管理 に必要なステップです。
作業者は一定の規則的な動作で、測定したい部品の上にスキャナーを通過させます。
作業者は、音声または視覚的な合図でスキャンが完了したことがわかります。通常は、スキャン精度の向上と点群登録のために、測定対象物の表面に位置決め用のスキャンマーカーを貼付します。
スマートマニュファクチャリングとは?
スマートマニュファクチャリングは1990年代から使われるようになった用語で、しばしば 「インダストリー4.0 」と呼ばれるものと結びついています。これは、コンピューターや自動化されたシステムが製造工程を強化する度合いが高まっていることを意味します。
三次元測定機やポータブル3次元測定器は、いずれもスマートテクノロジーの一要素ですが、スマートファクトリーを際立たせているのは、人の介在をほとんど必要とせずに、複数の機械が相互に通信しデータを共有できる度合いです。
今日、スマートファクトリーは単なる流行語ではなく現実のものとなっています。実際 全米製造業者協会の最近の報告書 によると、回答者の半数以上(53%)が自社の工場やプラントが「スマート化されている」と答え、半数近く(49%)が「将来、部分的または完全に自動化された工場になる」と予想しています。
製造業における自動化の出現
この統計は、スマートマニュファクチャリングは進化するプロセスであるという第二の真実を浮き彫りにしています。つまりそれは、自動化とデジタル化のプロセスであり、今ではそこに、リアルタイムデータを保存し、機械と作業者の間で共有できるクラウドコンピューティングが含まれます。
これはまた、製造業における自動化の一形態であり、「デジタルツイン」と呼ばれる工場のデジタルレプリカを活用して、機械やその工場内での物理的な配置を最適化することを含みます。さらに、機械にセンサー(IoT)を装備することで、安全性や整合性を監視し、故障が起こる前に人間のオペレーターに警告を発する予知保全を可能にします。つまり、人間が進化し続けるテクノロジーと共に働くことで、 現代の製造業における競争優位性を見出すのです。
ハンディ3Dスキャニングとスマートマニュファクチャリング
ハンディ3Dスキャナーは、人間と自動化の連携を実現する重要な存在です。ハンディスキャンは、その特性上、作業者が移動しながらスキャンを行うことが可能です。これには、生産ラインから出た製品の初回品検査や、部品を製造する機械自体の点検も含まれます。
機械はあらかじめ設定されたプログラムに従って動作するのは得意ですが、即興的な対応はあまり得意ではありません。また、どれほどポータブルな機械であっても、二本の脚と二本の腕、そして対向する親指を持つ人間のような機動性は持っていません。ハンディ3Dスキャナーを使用する作業者は、その機動性と使いやすさにより、リアルタイムの品質管理、アディティブマニュファクチャリングによるリバースエンジニアリング、そして予知保全といった業務に理想的な存在となります。
Leap STで飛躍する
このような作業に最適なFAROの測定器には、先進の3次元測定ソリューションである FARO® Leap ST®, ハンディ3Dスキャナーがあります。コンパクトな高精度スキャナーとして設計されたLeap STは5つの動作モードを備え、航空宇宙や自動車から輸送機器や金属加工など、さまざまな業界のワークフローにメリットをもたらす多用途性と携帯性を備えています。
超高速スキャン: この主要モードは、34本のレーザーを交差させて、車のドアなどの中型から大型の部品を迅速にスキャンします。Leapは、複雑さと要求される詳細レベルに応じて、ディープホールスキャンや超高精細スキャンなどのモードに切り替え、細心の注意を必要とする特定の領域に焦点をあててスキャンすることができます。
超高精細スキャン: 7本の平行レーザーラインが接近した焦点距離で動作し、可能な限り高い点密度でスキャンします。超高精細スキャンモードでは、超高速スキャンでは見逃してしまうような要素の複雑なディテールを捉えることができるため、スキャンするエリアを慎重に選択する必要があります。高解像度でスキャンすると、その後の処理でデータ負荷が増大するため、これはファイルサイズを管理する上で不可欠です。
ディープホールスキャン: このモードは、プロジェクターと片方のカメラの間の距離に基づいて独自のレーザーラインを三角測量することで、深い穴の内部をスキャンする能力を大幅に向上させます。最大30mmの深さまでのスキャンが可能で、裂け目や深穴などの形状を測定・スキャンするために、ディープホールスキャンモードは優れた機能を発揮します。
広範囲スキャン: 11本の平行赤外線レーザーラインを照射するこのスキャンモードは、航空機の主翼や機体のような広い面を速く効率的にスキャンします。このモードは、最初のラフスキャンの基礎的となる参照用として機能し、必要に応じて、超高速、超高精細、またはディープホールスキャンモードに切り替えて特定のエリアでより詳細なスキャンを行うことができます。
フォトグラメトリ: 他のスキャンモードやワークフローと併用することで、広範囲のスキャンでも誤差を最小限に抑えることができます。別の複数のアクセサリーを必要とすることが多い従来のフォトグラメトリとは異なり、FARO Leap STには、スケールバーを含む写真測量に必要なものがすべて同梱されています。
Leap STの詳細と技術仕様についてはカタログをダウンロードしてください。
ハンディ3Dスキャニングの用途
生産現場でのLeap STの活用には多くの利点があります。その最たるものは、再作業、ムダ、不良品の削減や公差を満たさないゴールデンパーツや初回品検査の検出、ラピッドプロトタイピングや設計検証における欠陥、偏差、変形の特定です。
また、スキャンしたモデルとCAD設計を比較し、製品が仕様を満たしていることを確認したり、リバースエンジニアリングの一環として、レガシーパーツや旧型部品をスキャンして正確なデジタルモデルを作成することもできます。
CAD比較検査やリバースエンジニアリングの用途以外にも、生産現場でのハンディ3Dスキャンには次のような用途があります。
- 3DプリンティングやCNC加工と統合して、設計の検証を迅速に行う
- ロボットアームや自動機械の位置決め
- 生産環境をスキャンして、ロボットプログラミング用の正確なレイアウトを3Dで作成
- 自動化された組立ラインのキャリブレーションとアライメント
- 到達が最も困難な場所においても、現場でのサブミリメートル精度のデータを追加することによりデジタルツインのシミュレーションを強化
最も活用できる業界
航空宇宙産業 と 自動車産業 は、間違いなくハンディ3Dスキャニングの恩恵を受ける業界です。その理由は、さまざまなサイズの部品を測定する必要がある複雑性です。Leap STのように5つの切り替え可能なモードでスキャンできるツールは、多用途性が高いからです。
自動車のドア、エンジンのシャーシ、車内のダッシュボードなど、いずれもアクセスしにくくスキャンが困難な深穴もあります。タービンブレード、機体の部品、重要な航空機部品はすべて、厳密な仕様通りに位置合わせし、検査する必要があります。
スマートファクトリーとハンディ3Dスキャニングの未来
スマートファクトリーとハンディ3Dスキャニング技術の進歩の速度を考えると、この2つの技術がどこでどのように進化するのか未来を予測することは困難です。
私たちにできるのは、現在から推定して合理的な予測を立てることくらいです。
スマートファクトリーのIQ向上
スマートファクトリーはさらに賢くなるでしょう。たとえAIが完全な知能を達成できなかったとしても、たとえ今日の初歩的なAIであっても、効率を向上し、製造のボトルネックを解消し、再作業、ムダ、不良品、時間やコストを削減する上で重要な影響を与えるでしょう。
人やポータブル3Dスキャナーを過小評価してはいけない
AIは進化を続けていますが、人間がいなくなるわけではありません。ハンディ3Dスキャナーのようなツールも、スピード、精度、携帯性の面でさらに進化し、クラウドベースのデータ共有や、他のアセンブリマシンとの直接的な通信による自律的な位置補正など、スマートファクトリーの既存システムとの連携能力も向上していくでしょう。
真のクローズドループエンジニアリング
これら2つの予測から導き出されるのは、3つ目の予測です。それは、最終的に真のクローズドループエンジニアリングを開発し、可能な限りムダをなくし、完璧に近い効率を実現することです。繰り返しになりますが、これは人間を完全に排除することを意味するのではなく、人間が行う仕事の種類を変えるということです。つまり、手作業や面倒でミスの起きやすいデータ入力といった作業ではなく、監督や管理といった役割に人間の仕事をシフトさせることを優先することを意味します。
競争力のある明日のためのコンパニオンツール
今のところ、今日のスマートファクトリーとハンディ3Dスキャン技術が切っても切れない関係であることは明らかです。それぞれを最大限に活用するためには、お互いが必要です。そしてFAROは、Leap STの多用途性で3Dスキャン技術をリードしています。
新しいLeap STとその可能性については、ウェビナーをご覧ください。